個人年金は年8万円の保険料で上限まで控除!
年末調整に間に合うには
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老後の資金準備に役立つ個人年金保険。
個人年金保険に加入していることで保険料控除が受けられ、毎年の税負担を軽減できることを知っていますか?
この記事では、個人年金保険の控除上限額や戻ってくる税金額、実際の申込みや年末調整に向けたスケジュールまで解説いたします。
そもそも保険料控除ってどんな仕組み?
保険料控除は、個人が支払った保険料の一部を所得から差し引くことで、税負担を軽減するための制度です。
具体的には、生命保険(死亡保険や学資保険)、個人年金保険、医療保険や介護保険などの保険料が対象となり、これを所得から控除することにより、課税所得が減少します。結果として、所得税や住民税の負担が軽くなる仕組みです。
この制度は、国民それぞれが公的な社会保障だけに頼らず、将来のリスクに備えて自ら保険を契約することを推し進めるために設けられています。
生命保険料控除には、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3つの種類があり、それぞれの控除額には上限があります。
一般生命 保険料控除 |
定期保険、終身保険、収入保障保険、学資保険など |
---|---|
介護医療 保険料控除 |
医療保険、がん保険、介護保険、就業不能保険など |
個人年金 保険料控除 |
個人年金保険など |
そもそも個人年金保険ってどんな保険?メリット・デメリットは?
個人年金保険は、将来の年金受取を目的とした生命保険の一種で、契約者が一定期間保険料を支払い、保険料支払いが終了した後に年金形式で給付金を受け取ることができます。
この保険は、公的年金に加えた老後の資金を確保するための手段として利用されることが多いです。
個人年金保険のメリットとしては、老後資金の計画的な準備が可能であること、保険料控除を利用することで税金の軽減が期待できることが挙げられます。
一方で、デメリットも存在します。
主なデメリットとしては、途中で解約すると元本割れするリスクがあること、年金受取開始前に資金が必要になった場合、事前に決めてある時期(60歳や65歳など)以前に受け取りたいと思ってもできない商品が多いことなどがあります。
メリット
- 老後資金の計画的な準備が可能
- 保険料控除を利用することで税金の軽減が期待できる
デメリット
- 途中で解約すると元本割れするリスクがある
- 年金受取開始前に資金が必要になった場合、事前に決めてある時期以前に受け取りたいと思ってもできない商品が多い
個人年金保険を選択する際には、ご自身のライフプランなどを十分に考慮し、適切なプランを選ぶことが重要です。
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個人年金保険料控除の上限額は?
個人年金保険料控除の上限額は、所得税と住民税で異なります。
所得税における個人年金保険料控除の上限額は4万円、住民税では2万8,000円となっています。
この控除額は支払った保険料の額に応じて段階的に増減します。
所得税では8万円超の保険料を支払った場合に最大の控除額である4万円が、住民税では5万6,000円超の保険料を支払った場合に最大の控除額である2万8,000円が適用されます。
つまり、年間8万円超の保険料を支払っていると個人年金保険料控除を最大限に活用できるといえます。
所得税 | 住民税 | ||
---|---|---|---|
年間の 支払保険料 |
控除額 | 年間の 支払保険料 |
控除額 |
8万円超 | 一律 4万円 |
5万6,000円超 | 一律 2万8,000円 |
新制度と旧制度とは?
個人年金保険料控除には、2012年の税制改正を境に新制度と旧制度の二つの制度が存在します。契約の締結時期によってどちらの制度が適用されるかが異なります。
新制度は2012年1月1日以降に契約された個人年金保険、旧制度は2011年12月31日までに契約された個人年金保険が対象です。
旧制度では、所得税における個人年金保険料控除の上限額は5万円、住民税では3万5,000円となっています。
所得税 | 住民税 | ||
---|---|---|---|
年間の 支払保険料 |
控除額 | 年間の 支払保険料 |
控除額 |
10万円超 | 一律 5万円 |
7万円超 | 一律 3万5,000円 |
個人年金保険料控除額を上限まで使うには年8万円の保険料支払いが条件
個人年金保険料控除を上限まで使いたい場合は、個人年金保険の年間保険料を8万円超にすることが条件になります。これは、月々の支払いに換算すると約6,667円となります。
年間の保険料が8万円を下回る場合はどうなるでしょうか?
例えば、年間4万円の保険料を支払った場合、所得税の控除額は3万円、住民税では2万1,000円となります。所得税の控除上限額4万円、住民税の控除上限額2万8,000円には届かないことがわかります。
所得税 | 住民税 | ||
---|---|---|---|
年間の支払保険料 | 控除額 | 年間の支払保険料 | 控除額 |
2万円以下 | 年間支払保険料の全額 | 1万2,000円以下 | 年間支払保険料の全額 |
2万円超~4万円 | 支払保険料×1/2+10,000円 | 1万2,000円超~3万2,000円 | 支払保険料×1/2+6,000円 |
4万円超~8万円 | 支払保険料×1/4+20,000円 | 3万2,000円超~5万円6,000円 | 支払保険料×1/4+14,000円 |
8万円超 | 一律4万円 | 5万6,000円超 | 一律2万8,000円 |
なお、年間の支払保険料が8万円額を超えたとしても、控除額が引き上げられることはないため注意が必要です。
個人年金保険は、長期間にわたって支払いを続けることで老後の資産形成ができるという商品です。
保険料の支払いが負担にならないよう、無理のない範囲で設定することが、控除を上限まで活用するためのポイントです。契約時には解約返戻金や払込期間なども確認しておきましょう。
個人年金保険料控除をすることで税金はいくら戻ってくる?
年間8万円の保険料を支払った場合、所得税では4万円、住民税では2万8,000円控除されます。
合計の控除額は6万8,000円ですが、こちらがそのまま戻ってくるのではなく、10%や20%などの税率をかけた額が戻ってくる仕組みです。
例えば、6万8,000円に10%をかけて6,800円が戻ってくる、などと計算されます。
この税率は年収によって異なります(住民税は一律10%です)。厳密にいうと、年収から給与所得控除を差し引き、さらに生命保険料控除や医療費控除などを差し引いた「課税所得」によって求められます。
課税所得の計算式はここでは省きますが「年収とはまったく違う額になる」ことをおさえておきましょう。
課税所得 | 1,000円~ 194万9,000円 |
195万円~ 329万9,000円 |
330万円~ 694万9,000円 |
695万円~ 899万9,000円 |
|
---|---|---|---|---|---|
税率 | 5% | 10% | 20% | 23% | |
戻ってくる税金 | 所得税 | 2,000円 | 4,000円 | 8,000円 | 9,200円 |
住民税 | 2,800円 | 2,800円 | 2,800円 | 2,800円 | |
合計 | 4,800円 | 6,800円 | 10,800円 | 12,000円 |
例えば年間保険料8万円の個人年金保険に課税所得500万円の人が加入している場合、20%の税率が適用され所得税と住民税の合計で1万800円の税金が軽減されます。課税所得によって税率が異なるため軽減額に差が出ますが、数千円の差であることがわかります。
この記事では「個人年金保険料控除」について解説していますが、生命保険料控除には合わせて3つの種類があります。
「一般生命保険料控除」は定期保険、終身保険、収入保障保険、学資保険などに加入している場合、「介護医療保険料控除」は医療保険、がん保険、介護保険、就業不能保険などに加入している場合がそれぞれ対象です。
民間の生命保険にいくつか加入している方であれば、さらに税金が戻ってくるということになるでしょう。ご自身やご家族の契約をいま一度確認することをおすすめいたします。
個人年金保険料控除を受けるための条件とは?
個人年金保険であればどの商品であっても控除を受けられるというわけではありません。控除が受けられるのは「個人年金保険税制適格特約」が付加されている商品です。
この特約を付加するためには、以下4つの条件があります。
- 年金を受け取る人が契約者本人またはその配偶者であること
- 年金を受け取る人が被保険者と同じであること
- 保険料の払い込み期間が10年以上であること
- (確定年金・有期年金の場合)年金の受け取り開始が60歳以降であること、かつ受け取り期間が10年以上であること
「個人年金保険税制適格特約」を付加できるプラン例
- 私が保険料を払って、私がリタイアするタイミングで私が年金を受け取りたい
- 30歳で契約して、35年後の65歳から10年間年金を受け取れる契約にしたい
定額個人年金保険のイメージ
「個人年金保険税制適格特約」を付加できないプラン例
- 自身で保険料を払い、自身がリタイアするタイミングで配偶者が年金を受け取る
- 保険料は一括支払い(保険料の払い込み期間が10年以上ないといけません)
- いまから5年後に受け取り開始(保険料の払い込み期間が10年以上ないといけません)
- 55歳から受け取り開始(60歳以降の受け取り開始でないといけません)
- など
「個人年金保険税制適格特約」を付加するには、これらの条件ではお申込みできません。
保険料控除を受けたいというご希望がある方は、「個人年金保険税制適格特約」を付加できる条件を確認しておきましょう。
おすすめ!保険料控除が使える個人年金保険は?
個人年金保険料控除を受けるために必要なオプション「個人年金保険税制適格特約」が付加できる商品について、資料のご請求やお問合せを承ります。
商品を見る個人年金保険では、老後の生活に必要な資金を計画的に準備できる設計が求められます。
例えば、受取開始年齢や受取方法の選択肢が豊富であるか、利率はどうか、年金の種類(終身年金や有期年金、確定年金)が自分のライフプランに合っているかなどをチェックすることが重要です。
保険料の支払い方法や期間についても考慮しましょう。月払い、年払いなど柔軟な支払い方法が用意されている商品を選ぶことで、家計管理がしやすくなります。
また、長期的に無理なく支払いを続けられる保険料設定であることも、選ぶ際の重要なポイントです。
2024年の年末調整に間に合うよう申込できる?
会社員や公務員の方が、2024年の年末調整に間に合うよう個人年金保険に申し込むためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
生命保険料控除の控除額は、その年の1月1日~12月31日までに払い込んだ保険料によって決まります。年末調整での控除を受けるためには、その年の12月31日までに保険料を払い込んでいる必要があります。
場合によっては、契約成立後に初回保険料の支払いをするといったケースもあるため、年内に契約完了してさえいれば問題ないということではないので注意しましょう。保険会社によっては年末に向けて申し込みが集中することがあり、手続きが通常より時間がかかる場合もあるため、早めの準備が重要となります。
さらに、控除証明書を年末調整の提出期限までに受け取ることも重要です。
控除証明書は加入している生命保険会社から通常10月頃に発送されます。11月、12月に保険料支払いが発生する方へは、代わりに「生命保険料控除申告予定額のお知らせ」が届きますので、それを年末調整に使用しましょう。
この書類の発行には時間がかかることもあるため、余裕を持って準備を進めてください。
実際には、年末調整の書類の提出期限は勤務先により11月~12月中旬と指定されているケースが多いはずですので、2024年の年末調整に間に合わせる実質的な条件は「勤務先で決められている年末調整書類提出期日までに、生命保険料控除証明書または生命保険料控除申告予定額のお知らせを受け取っていること」となりそうです。
「年内に保険料を払い込む予定があるのに、控除証明書を受け取る前に会社に年末調整の書類を提出してしまった…」という方は、翌年2月16日~3月15日の間に確定申告をすることで保険料控除を受けることができます。
税制優遇を受けながら資産形成するならiDeCoもおすすめ
税制優遇を受けながら資産形成を考える場合、iDeCo(個人型確定拠出年金)は非常に有効な選択肢です。
個人年金保険とiDeCoは、どちらも老後資金を準備するための手段となります。個人年金保険は保険料を支払うことで保険会社が運用をしてくれますが、iDeCoは加入者自身が毎月一定額を積み立てて運用する制度です。
税制面から見ると、iDeCoには大きなメリットがあります。具体的には、iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となり、所得税や住民税の負担が軽減されます。
また、運用益も非課税で積み立てられるため、効率的に資産を増やしやすいといえるでしょう。
デメリットとしては、iDeCoは60歳まで資産が引き出せないこと、元本割れのリスクがあることが挙げられます。
資産形成は税制優遇の側面だけでなく、きちんと老後に安心できる金額を残せるか、ライフプランに合った方法で資金準備できるか、といったことが重要です。
さまざまな面から比較検討して納得のいく選択をしたいですね。
保険や資産形成のこと、ぜひご相談ください
今回取り上げた「個人年金保険」は、保険でありながら資産形成ができる商品です。
- 既に医療保険や死亡保険にも入っているのに個人年金保険も、となると家計の負担が心配
- iDeCo、NISA、保険…老後資金を準備する方法がたくさんあってわからない
といったお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
現在の保障に無駄がないか、
最適な保険選びができているかチェックできます
FPがライフプラン表を作成し、
保険・税金・
固定費削減などのお悩みにお答えします
まとめ
個人年金保険と保険料控除について解説してきました。
個人年金保険の控除上限額や戻ってくる税金額のイメージはついたでしょうか?個人年金保険料控除を受けるためには条件があるため、加入する際には資料をよく確認したり、不明点を担当者に聞いたりしておくことをおすすめします。
今年度の年末調整に間に合わせるよう手続きすることも大切ですが、それ以上にライフプランに合った方法で老後資金の準備をはじめることが大切です。
老後資金を準備する方法は個人年金保険だけではなく、iDeCoやNISAなど多くの選択肢があります。それゆえ先延ばしにしてしまっているという方は、ぜひこの機会にご検討ください。
個人年金保険料控除を賢く活用しながら、計画的に資金を積み立て将来の備えを万全に整えていきましょう。
執筆者情報
執筆者
菅原 里紗
(2級ファイナンシャル・プランニング技能士/株式会社アイ・エフ・クリエイト)
当社のミッションである「安心できる金融商品選びをわかりやすくカンタンに」を胸に、
社員一同、誠心誠意お客様のお手伝いをいたします。
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