新型コロナウイルスにもしもかかってしまったら…
~公的医療保険制度と民間の生命保険でできること~
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世界中で猛威を振るった新型コロナウイルス。感染状況は以前と比べると落ち着き、厚生労働省は新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを「五類感染症」へ変更しました。
もし自分や家族が新型コロナウイルスに感染してしまったときの治療費はどうなるのか、加入している保険は使えるのか。公的な医療保険制度に加え、民間の生命保険・医療保険ではどのような保障・サービスが受けられるのかについて、2023年5月8日以降の情報についてご案内します。
2023年4月25日時点の情報をもとに作成しています。
新型コロナウイルスに感染してしまったら…公的医療保険制度でできること
新型コロナウイルスが五類感染症に位置付けられたことによって、私たちにどんな影響があるのでしょうか。万が一新型コロナウイルスに感染してしまった場合、治療が長引けば経済的な不安を感じる方も多いはずです。
では、実際の経済的な負担がどのようなものなのかを見ていきましょう。
新型コロナウイルスは五類感染症へ
日本では厚生労働省が2023年5月8日に新型コロナウイルスを『五類感染症』に位置付けを
変更しました。※1『五類感染症』へ変更されたことによって、次のように見直しがされます。
- 医療提供体制
入院措置を原則とした限られた医療機関による特別な対応
→ 幅広い医療機関による自律的な通常の対応 - 入院・外来の医療費
公費負担
→ 自己負担 ただし一部公費支援あり
(一定期間継続*)
夏の感染拡大への対応としてまずは2023年9月末まで措置とする。その後は他の疾病とのバランス等を踏まえ検討する。
幅広い医療機関で新型コロナウイルス患者が受診可能になることを目指す意味合いがあります。
ただし、新型コロナウイルスの医療費はすぐに全額が自己負担となるのではなく、公費支援を期間を区切って継続します。
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
新型コロナウイルスに関する治療費は自己負担へ
2023年5月8日以降、新型コロナウイルスの外来医療費は自己負担となり、入院医療費についても一部負担になります。※2
厚生労働省「医療提供体制及び公費支援について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html#h2_free3
2023年5月7日以前 | 2023年5月8日以降 | |
---|---|---|
検査 | 有症状者等の 検査費用を公費支援 |
自己負担 ただし高齢者施設等のクラスター対策は支援継続 |
外来 | 自己負担分を 公費支援 |
自己負担 ただし治療薬の費用は公費支援あり (一定期間継続*) |
入院 | 自己負担分を 公費支援 |
自己負担 一部公費支援あり (一定期間継続*) |
夏の感染拡大への対応としてまずは2023年9月末まで措置とする。その後は他の疾病とのバランス等を踏まえ検討する。
新型コロナウイルスに感染してしまったら…経済的な負担は?
2023年5月8日以降に新型コロナウイルスに感染した場合、まず医療費がかかります。また、入院に伴う日用品の購入や、家族のお見舞いで発生する交通費なども自己負担になります。
さらに一番心配なのは、一家の大黒柱または家計を支える立場の方が入院となった場合です。
家計の収入に影響はないでしょうか。
もしくは自分や家族は感染していなくても周りに感染者が出た場合、ご自身も看病などのため一定期間仕事ができずに収入が減ってしまう場合も考えられます。
それではこれらの不安の解消のために役に立つ方法はあるのでしょうか。
傷病手当金
もしも病気やケガで通常通り仕事をできなずやむを得ず休んでしまった場合、有給休暇を取得したりしてその間収入をカバーすることもできますが、仕事ができない期間が長引けばそうもいかなくなりますね。
そんなときのために、健康保険制度の一つとして傷病手当金という保障があります。
これは、会社員や公務員などの健康保険加入者が病気やケガで3日間連続して業務につけない場合に、4日目以降の仕事ができなかった日に対してその日数分給付が行われる制度です。
給付される金額は、まず直近12ヶ月分の標準報酬月額を合計し、12で割ることで標準報酬月額の平均額を算出します。その金額を30で割った数の2/3が1日の休業に対して支給される金額となります。
なお、傷病手当金は以下の状態に当てはまる場合に、最初の傷病手当金の支給開始日から数えて通算1年6か月に達する日まで給付を受けることができます。
- 給与の支払いがされていない状態
- 通常通りに仕事に就けない状態
- 病気やケガの原因が業務外で起きた場合
- 連続して4日以上仕事に就けない場合
傷病手当金は新型コロナウイルスに感染してしまったら対象になるのか?
もちろん、新型コロナウイルス感染で3日間以上継続して業務ができず4日目以降もそうした状況であれば支払対象になります。※3
尚、自覚症状がなくてもPCR検査で新型コロナウイルス陽性と判定されたため、療養のため仕事ができなかった場合や、自覚症状があるものの、病院での受診ができず自宅で療養を行っていた場合なども保障を受けられるケースもあります。
通常傷病手当金の支給を受けるには医師の診断書が必要となりますが、新型コロナウイルスに関しては、病院の事情により診察を受けられなかった等で診断書が取得できなかった場合でも、事業主による証明書類で申請ができるケースもあるようです。
厚生労働省保険局保険課 新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給について
https://www.mhlw.go.jp/content/000604969.pdf
- 新型コロナウイルス感染のため3日以上連続で仕事ができず収入が減った場合
→ 傷病手当金の対象になるため、収入減を補うことができる。
ただし、傷病手当金はあくまでも直近の収入の約2/3にあたる金額を保障する制度となるため、家族の中の働き手が感染してしまった場合に治療によって世帯収入が減少することは免れません。
一部の収入減を十分補填できる貯蓄がある家庭には心配ないかもしれませんが、そうでない場合も決して少なくないはずです。
それでは傷病手当金でカバーされない収入の約1/3にあたる部分はどうすればよいのでしょうか。
多くの人が加入している民間の生命保険や医療保険。皆さん、加入する際には自分や家族が「もしも」のときを想定して、その時に得られる公的保障がどれくらいか、それではまかないきれない部分を何とかしておきたいという考えで加入を検討されたケースが多いのだと思います。そもそも民間の保険は公的な保障を補うためにも役立てるものです。
もしも新型コロナウイルスに感染してしまったら私たちが加入している保険、もしくはこれから加入を検討している保険はどのような給付を受けられるのか、どんな形で役に立つのでしょうか。
新型コロナウイルスに感染してしまったら…民間の保険会社による支援
コロナ禍において民間の生命保険・医療保険が役に立てる2つのこと
- ①
保障 - ②
契約者向け付帯サービス
① 保障
①-1 医療保険
もしも新型コロナウイルスにかかってしまった場合、疾病入院の保障が含まれる医療保険に加入していれば、万が一入院をした場合、他の病気やケガと同様に入院によって給付が受けられます。
また、保険の種類によっては、一日の入院でもまとまった一時金を受け取れたり、集中治療室に入院した場合に一時金を受け取れるものもあり、それらも保障の対象となります。
医療保険
- 新型コロナウイルスで医療機関への入院 → 入院日数に応じて疾病入院保障の対象となる。
- 入院一時金や集中治療室(ICU)治療給付金等付帯されている保障によって対象となる場合がある。
①-2 死亡保険
もっとも考えたくはないことですが、新型コロナウイルス感染によって万が一亡くなってしまった場合には、死亡保険に加入していれば、死亡保険金を受け取ることができます。
尚、通常死亡の原因が災害であった場合、災害死亡保険金といって死亡保険金に上乗せで保障できる特約があります。当初、今回の新型コロナウイルスでの死亡に関しては、各保険会社は災害死亡保険金の対象外としていましたが、2020年4月中旬以降、日本の大手保険会社は、新型コロナウイルスの死亡に関しては災害死亡保険金の対象となるという発表をしています。※4
この部分は保険会社によって見解が異なる部分ですので、加入している保険会社に確認をしてみてください。
参照:明治安田生命 新型コロナウイルス感染症に関する保険金・給付金のご請求について
https://www.meijiyasuda.co.jp/profile/news/topics/information03.html#02
死亡保険
- 新型コロナウイルスによる死亡 → 死亡保険金の対象となる。
- 保険会社によっては、【災害死亡保険金】の対象にもしている場合がある。
①-3 収入の減少をカバーするための保険
新型コロナウイルス感染で仕事ができなくなった場合、会社員や公務員の場合は収入の補填は傷病手当金という健康保険制度の仕組みがあるとお伝えしましたね。ただし先述の通りこれまでの収入を満額保障できるものではありませんでしたね。また治療のために病院等への入院をすることで医療保険からの給付を受けられることもわかりました。
そのほかには、民間の保険会社では収入減少をカバーするための保険も存在します。あまり聞きなれない言葉かもしれませんが損害保険会社の商品である『所得補償保険』や生命保険会社の商品である『就業不能保険』といわれるものです。
所得補償保険とは
日常生活におけるケガや病気が原因で、働くことができなくなった場合に、それまで得ていた所得の損失分を補うことができる保険です。医師によるドクターストップで仕事ができない状態にあることが支払いの条件で、かつ商品によって4~7日の免責期間があり、この期間経過後に最長2年まで毎月設定した金額をお給料のように保険会社から受け取ることができます。
また、医療保険と違って給付を受けるために必ずしも入院を伴う必要はなく、医師による就業不応の診断があれば給付を受けられます。つまり自宅療養中でも保険金を受け取れるのです。新型コロナウイルス感染の場合でも、給付の対象となる場合がありますので、一度ご検討してみてはいかがでしょうか。※5
特に、健康保険から保障される傷病手当金は会社員や公務員のための制度のため、国民健康保険加入者である自営業やフリーランスの場合制度の対象となっていません。 仕事ができない場合にこうした補償が無くすぐに収入が減ってしまう場合にはおすすめの保険です。収入が減ってしまったとしても、住宅ローンや光熱費、子供の学費等は継続的に支払いが発生しますので、収入代わりに得られる給付があることで、治療に専念できたり、家族もそれまでと変わりない生活を送ることができます。
保険会社によって取扱いが異なりますので、詳細につきましては必ず各保険会社のパンフレットや約款でご確認ください。
就業不能の保険とは
生命保険会社の商品である就業不能保険も、やはり病気やケガが原因で働けなくなったときの保険です。先ほどご紹介した所得補償保険では、免責期間が4~7日間であったのに対し、就業不能保険は一般的に60日もしくは180日の免責期間を設けており、それ以上長い期間継続して働けない状態にある場合に、保険給付を受けることができます。つまり長期的な就業不能をカバーする保険であり、保障の期間も60歳65歳までと、ある程度長い期間を設定できます。
また働けなくなったとき、つまり給付を受けられる条件は、各保険会社によって細かく定められており、障害状態や介護状態に該当したり、三大疾病等の治療のため自宅療養が必要な場合などが該当します。
新型コロナウイルス感染でも保険会社が定めるこうした働けない状態に該当すれば保障の対象となり得ますが、免責期間が長い保険のため、新型コロナウイルスの治療では多くの場合、この免責期間中に回復し給付対象にならない可能性があります。
② 契約者向け付帯サービス
生命保険各社では、日ごろから契約者に向けた様々なサービスがあります。中でも多くの保険会社では、契約者向けの医療相談サービスを行っています。
体調がすぐれないからといって気軽に病院へ受診することが難しい時は、こうしたサービスを活用して、専門家に相談するのもおすすめです。
医療相談サービスは電話で24時間受け付けているところが多く、特に小さな子どもが夜中に体調を崩したり、土日に体調不良・ケガをしてしまったなどの場合でも相談することができるのは、心強いサービスですね。
民間の各保険会社では保険給付だけでなく、保険契約を継続するための支援策や、経済的に困難な場合の様々なサービスがあります。
保険を解約してしまうことは簡単ですが、もし以後加入したい場合には保険料が上がってしまったり、健康上の理由などから加入ができなかったり、それまで加入していたものと同じ保障が得られない場合も多くあるため、こういった状況では特に、保険会社のサービスを充分に活用してできる限り保障を継続することも大事です。
各社の支援サービスは一律ではないため、気になった場合は必ず自分の加入している保険会社へ詳細を確認するようにしましょう。
まとめ
私たちの生活は新型コロナウイルス流行時と比べ、少しずつ以前の生活を取り戻しているように感じます。しかし、新型コロナウイルスは終息していません。
万が一自分が感染してしまったときのために今すべきことを考えて準備しておくことができたら、不安な状況でも少しは安心できるかもしれません。
もしものときのために公的な保障はどんなものがあるのか、正しい情報を確認しておくこと、またそれでも大変な時のためには自ら備える。
そのための民間の保険があります。ぜひ活用して困難な状況に備えておきたいですね。
保険のプロがご相談にお応えします