退職後に訪れる老後の生活への心配は、誰しもが抱えている不安なのではないでしょうか。一般的な公的年金制度として国民年金や厚生年金に加入していても、それだけでは充分とは言えません。
公的年金と合わせて、退職金や金融資産(預貯金など)でまかなえるのであれば良いですが、やはり働き盛りの若いうちから備えておきたいと考えている方も多いかと思います。医療にかかる費用をはじめとして、公的制度だけではなく自助努力で備えることが非常に重要です。
老後資金を積み立てていくための方法として、民間の保険商品を利用したり国の制度を利用したりと多様な方法が用意されており、どの方法が一番良いのか迷ってしまいますよね。ここでは老後の資金を貯めていく方法を選択する際の比較参考として、それぞれの特徴についてご紹介していきます。
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老後に必要な貯蓄額
生命保険文化センターの意識調査によると、老後に必要な最低日常生活費は夫婦で平均月22万円となっており、20万円~25万円未満が31.5%と最も多くなっています。また、ゆとりある老後の生活費は平均で34.9万円となっています。日本人の平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳です。長寿はとても喜ばしいことですが、長く生きればそれだけ支出が増えてしまうものです。
仮に、65歳から87歳までの22年間生きるとすると「264万円×22年間=5,808万円」夫婦の最低日常生活費として5,808万円が必要となり、ゆとりある老後の生活費として考えると「420万円×22年間=9,240万円」単純に考えて9,240万円もの大金が必要となります。
上記の金額はあくまで目安ですので、実際に必要な金額はそれぞれの生活背景によって異なってきます。
しかし、これほどの大金を自力で準備するのは難しいですよね。老後は退職などもあるため、大幅に収入が減少します。そのため、国からの年金を受け取りながら老後の生活をしています。
このことから考えると、まとまった老後資金から公的年金の受給額を差し引いた金額が貯蓄として準備しなければいけない金額となります。
国からの年金は、自営業者か厚生年金に加入している会社員かによって受給できる金額が異なります。自営業者は国民年金から「老齢基礎年金」のみ支払われ、会社員は「老齢基礎年金」にプラスして、厚生年金から「老齢厚生年金」が支払われます。自営業者の方は会社員の方に比べると受給される金額が少なくなってしまうため、多めに資金を準備しておく必要があります。
老後に備えるための制度や商品
資金を準備していく上で利息や運用益も大切ですが、税制面での優遇も見逃せないポイントです。節税しながらその分を老後の貯蓄にできたら、合理的に無駄なく積み立てていくことができますよね。
以下の表は、主な老後資金づくりの制度とその控除や非課税制度をまとめたものです。
〈主な制度と控除・非課税まとめ〉
会社員 | 個人事業主 中小企業経営者 |
自営業者など | |
国民年金基金 | ― |
社所得控除:掛け金全額 |
|
確定拠出年金(iDeCo) | 所得控除:掛け金全額 非課税投資枠:年間14.4万円~81.6万円 (加入資格によって異なる) |
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小規模企業共済 | ― |
所得控除:掛け金全額 |
― |
財形年金(制度がある場合のみ) |
非課税:元本550万円までの利息 |
― | ― |
個人年金保険 | 個人年金保険料控除(新契約): 所得税上限4万円 住民税上限2万8000円 |
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終身保険・収入保障保険など | 生命保険料控除(新契約): 所得税上限4万円 住民税上限2万8000円 |
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新NISA |
非課税投資枠: 「つみたて投資枠」年間120万円 「成長投資枠」年間240万円 総額1,800万円(成長投資枠1,200万円) 非課税保有期間:無期限 |
近年、注目を浴びているのは、確定拠出年金(iDeCo)です。誰でも加入できる点や、税制優遇などを考慮すると、活用しやすい資産形成といえますね。ただし、iDeCoは積み立てた資金を途中で引き出すことができません。自由に引き出すことができないことにネックを感じる方には、あまり向いていないですね。とはいえ、事由に引き出すことができないということは、強制的に貯蓄することができるので、お金を貯めるのが苦手な方には適していますね。
■国民年金基金
国民年金基金は、第1号被保険者(自営業者など)の20歳~60歳の方が加入できる「公的年金の2階建て部分」にあたります。公的年金制度は1階部分の「老齢基礎年金(国民年金)」2階部分の「老齢厚生年金(厚生年金)」で構成されています。
会社員の方などは老齢厚生年金や厚生年金基金といった上乗せがあるのに対し、自営業者やフリーランスの方などは1階建ての部分しかないため、受給額が減ってしまいます。その受給額減少を補てんする目的で作られたものが国民年金基金です。
【メリット】
・少ない掛け金から始めることができる
・加入後も状況に応じて掛け金の増減をすることが可能
・支払った掛け金は全額が社会保険料控除の対象
【デメリット】
・一旦加入すると途中で解約することができない
・物価スライドではない(物価スライド 物価の変動に応じて支給金額が変わること)
物の価値が上がってしまっても、物価にあわせて支給金額が上がることはありません。反対に物価が下がっても支給金額は下がらないので、その場合は実質得をすることになりますね!
■確定拠出年金(iDeCo)
iDeCoとは個人で積み立てていく私的年金制度です。2017年1月から、20歳以上60歳未満の方は基本的に誰でも加入できるようになりました。
特徴としては掛け金を投資信託で運用することで、運用実績に応じて将来受けとる年金額が増減するというところにあります。運用先をご自身で選択しますので、金融商品に関する知識もあると望ましいでしょう。
【メリット】
・3つの税制優遇を受けることができる
1.掛け金の全額が所得控除
2.金融商品の運用による利益が非課税
3.年金を受けとる際にも控除を受けられる
【デメリット】
・原則60歳までは解約や引き出しができない
・口座の運用などに手数料が生じる場合がある
・投資信託を選択した場合は元本確保商品と比べて、元本割れになってしまうリスクが高くなる
■小規模企業共済
小規模企業共済は、個人事業主・小規模な企業の経営者や役員などが、退職後の資金準備や廃業リスクに備えて加入する「経営者の退職金制度」です。
税制優遇やいざという時の貸付など利点も多いことから、加入要件に該当する場合にはおすすめの制度です。
【メリット】
・掛け金の全額が所得控除
・受けとる際にも退職所得控除が適用される
・掛け金の100%程度契約者貸付制度を利用することができる
・小額の掛け金で始められ、掛け金の増額も可能(一定の条件を満たせば減額も可能)
【デメリット】
・元本割れリスク 短い年数(240ヵ月以内)での解約は元本割れしてしまいます。
・掛け金の減額を行った場合、減額した部分は運用されないためお金が増えない
■財形年金
財形年金は一般的に「財形制度」と呼ばれる制度のうちの1つで、制度を導入した会社の社員が60歳以降に年金として受け取るための老後の資金づくりを目的とした貯蓄制度です。
財形住宅貯蓄と合わせて元本550万円までの利息が非課税となります。
【メリット】
・給与天引きなので、確実に貯めていくことができる
・財形住宅貯蓄と合わせて元本550万円までの利息が非課税(保険などの商品の場合は払込額385万円まで)
・60歳から年金を受け取ることができる
【デメリット】
・会社が契約している金融商品によっては元本割れの可能性がある
・利率が低い 資産運用よりも強制的に貯蓄できる定期預金と考えたほうが良い
・途中解約すると過去5年間の非課税分の利息に対して課税される
■個人年金保険
個人年金保険は保険会社より販売されている民間の私的年金で、「定額型」「変額型」があります。
「定額個人年金保険」 契約時に将来の年金額が決まっているタイプ
「変額個人年金保険」 運用成績によって将来の年金額が変わるタイプ
【メリット】
・所得控除を利用することができる
・確実に貯蓄ができる(定額型)
・将来の年金額が確定しているため、計画が立てやすい(定額型)
・運用次第では年金を多く受け取れる(変額型)
【デメリット】
・途中解約すると損をしてしまう(定額型)
・運用次第では受け取り金額が少なくなってしまう(変額型)
・受け取り金額の予測がしにくい(変額型)
詳細な内容は個人年金保険のメリット・デメリットのページで確認していただけます。
■終身保険
終身保険は一生涯にわたって死亡保障が続き、解約時には解約返戻金を受け取ることのできる保険です。
契約していれば、死亡保険金は必ず支払われますので、葬儀費用やご遺族にお金を残すことができます。
【メリット】
・必ず死亡保険金を受け取ることができる
・年々解約返戻金が増えていく
・一般生命保険料控除を利用して節税ができる
・変額終身保険は運用実績次第では解約返戻金が多くなる
【デメリット】
・払込期間中の解約返戻金は元本割れになる可能性がある
■新NISA
NISA(小額投資非課税制度)とは、日本に住む18歳以上の方を対象とした、少額からの投資を行う個人を対象とした税制優遇制度です。通常、投資で得られた利益には20.315%の税金がかかりますが、新NISAでは、生涯投資枠の上限1,800万円までの投資で得られた利益に対し、一生涯税金がかかりません。
【メリット】
・投資で得られた運用益・配当金・分配金は一生涯非課税
・少額でも投資を始められる
・いつでも売却可能で、翌年枠が復活
【デメリット】
・短期で引出す予定のお金の運用には向かない
・「損益通算」や「繰越控除」ができない
・海外に引っ越すと新NISA口座を継続できない金融機関が多い
新NISAは途中解約の必要が出てきたときにも対応できますので「絶対にやめられない」というプレッシャーもなく気軽に始められますね。
最後に
公的年金の上乗せに活用したい老後の資産形成方法についてのまとめはいかがでしたでしょうか?
それぞれにメリットやデメリットが存在しますが、ご自身の状況によって最適な方法は異なります。
ゆとりある老後のためにも「自分にはどの制度が向いているのか」を把握して満足のいく資産形成ができるといいですね!
保険をご検討の方は生命保険比較サイト「i保険」をご覧ください。